晴れときどき 宮尾節子


宮尾のブログ talk to who?               
by sechanco
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詩族 Ⅲ 誰に咲いているのだろう

a0082132_1295295.jpgなぜ。とおもった。なぜ、『精神障害と文字の対話 第1集』なのか。この本は。お昼時に、入った食堂の本棚で、手に取って、ひどく胸を突かれた。草の葉にのった露玉のようにぴかっと光った。あるいは寒い朝に土に降りた霜の、砂糖菓子のような甘やかな煌めきがあった。その並んだ短いことばたちには。わたしは、こころうばわれ、一心に読みふけった。短いコトバのひとつびとつに、心がふるえた。

そのとき。たった2メートル半ぐらいの距離を、サハラ砂漠を旅するヒトのように、決意をにじませたはるかなる面差しで、トレイに載せた一杯のコップの水を宝物のようにていねいに運んでくれるウエイトレスの女の子が、おぼつかない足取りでぶじ、わたしの目の前に到着した。──コップの水がありがたいものに思えた。精神障害者自立支援の場として開かれている、そこは食堂だった。

これらの、ことばは、詩である。『精神障害と文字の対話 第1集』・・・このシリーズがどのような世界に向けて発信され、どのような展開を望まれ、どのような必然性をもって、冠されたタイトルなのか、わたしは知らない。わからない。でも、これは、『詩集』である。それも、優れた詩集だとおもう。このような、切実で危うい場所で、詩の言葉はわき続けていたのだ。


ここに改めて、精神障害という言葉を外して、その本から抜粋した
『片桐丈晴』というすぐれた感受性を持つすぐれた詩人の小詩集を編んでみます。


<片桐丈晴 小詩集>

☆職場のノリちゃん

 うずらの卵の様な顔で
 いつもニコニコ笑っている彼女
 かわいいから髪を撫でてみた
 その笑顔はボランティアじゃないよね

★かけ声

 多忙な生活のさなかに
 地球儀を回しながら

 さあいくぞ

☆骸骨の標本

 妙に静かな特別教室で
 窓の外に向いている節穴が
 どこか痛々しくて心を離れず

★月夜はハーモニカ

 ばらばらな音階で
 でたらめな拍子で
 心が空に震えている月夜

☆自分本位

 自由に動ける人形を造ったら
 人形が逆らったので壊した

★十一月に君と

 その日は一緒でした

 山の上の喫茶店で
 たくさんの葉は彩り風に舞い

 日の光が
 雲間から葉を照らした

 それは美しく
 心へ焼きついています

☆分身

 三面鏡の前に立って映ると
 自分自身はバラバラになる
 何人も映る自分が別人の目をして
 一人でこっちを見ている

★死

 気配を殺して
 死は常に近くで待っている
 死を殺す者が生まれるなら
 死は死を恐れるか

☆くらし

 まるで波が消した足跡です
 仲直りしました
 いつもと変わらない食卓に
 おかずが並ぶ

★おもいやり

 誰とも話せないけれど
 安心して下さい
 寒い冬に咲ける
 シクラメンです

☆恋心

 心配して欲しくて甘える
 甘えたくて心配させる
 安心できると
 心は正直な嘘をつく

★動きだそう

 日陰で見える川底
 日向で反射する川面
 水は絶えず流れている
 立ち止まった人間のかたわらに

☆肢体

 この木から
 切断した枝は手足です
 痛いのだろうか
 口を持たないだけです

★ひらひら

 空が青いと
 幸せが降りてくるのか
 庭の芝生に蝶がとまっている
 黄色い羽をして

☆ミカン

 外で朝日に向かい
 光を暖かく感じた春
 太陽を絵で描くなら
 ミカンと同じ色にしよう

★繊細

 誰に咲いているのだろう
 花は美しい魔法を持っている
 踏まれたら折れてしまう
 細い体で遠慮がちな命

☆烙印

 重たい毎日が
 欠陥品を制止する
 検査の針は冷たい真実を指し示し
 慣れていくのか

★誰がために咲く

 太陽と雨と土に育まれて
 季節ごとに違う花は咲き
 花を美しいと感じる者にだけ
 花は美しく咲ける

☆草むらの哀歌

 カッパと約束をしている
 明日は草むらで雨を待とうと
 どうせ来ないと分かっているのに
 雨がカッパが明日が来ない

★好きな人へ

 いつまでもずっと
 疑問は解かないでいよう
 心を操っているのが誰かと
 騙されていよう

☆町の夜景

 遠い山並を覆う黒い空に
 月と星を連れて歩く夜道
 オバケが働く町の脳改良工場は
 煙突から複雑な煤煙を吐く

★地上

 黒い宇宙の片隅に浮かんでいると
 地球よ寂しくはないか
 蜃気楼が砂浜で
 八月五日に冷えた紅茶を求める

☆ごみ箱

 大概どこでも隅に置かれている箱
 イラナイが集まっていく箱
 泣き顔と笑顔と寝顔も
 箱には入れていかないだろう

★ATM

 規則正しい機械が話す音声は
 語学教材と同じ様な台詞(せりふ)を言う
 銀行からお金を下ろすと
 彼女にちょっぴり硬い雨粒がかかった

★店

 出入り口のマットは緑色で
 いつまでも枯れない春の野原です
 いらっしゃいませ
 ただ踏まれて独り言の挨拶をした

☆地球旅行客

 地球に来て太陽の光が眩しいと感じ
 地球の時計を見せてもらえました
 他の星から来て楽しかったです
 水をちょっと頂いてから帰ります


むねがふるえる。こころの生理にことばが触れてくる・・・といえば、いいのだろうか。「その笑顔はボランティアじゃないよね」と、たしかめる(つきつける‥)ことば。地球儀を回しながら、「さあ いくぞ」とかけるかけ声の遠さと近さ。ああ、ほんとうだ、そのとおりだと、なきだしたくなった。『自分本位』の「自由に動ける人形を造ったら/人形が逆らったので壊した」のは、わたしたちではないのか。わたしたち社会が自分本位に人形を造り、そして逆らえば、壊しているのではないか。人形ではなく、人間を。

「その日は一緒でした」このとつぜんな書き出しが詩だ。(君と)一緒のよろこびがとびだしてくる。「まるで波が消した足跡です/仲直りしました」「おかずが並ぶ」みごとな描写力で「くらし」の修正されるあり様が描かれている。今は・・・「誰とも話せないけれど/安心してください」というおもいやり。「水は絶えず流れている/立ち止まった人間のかたわらで」という自分の速度と世間の速度のながめ。「痛いのだろうか/口を持たないだけです」という手足を切断された木のきっぱりとした抗議。

「空が青いと/幸せは降りてくるのか」という舞い降りてきた黄色い蝶へのうれしいおどろき。「ミカンと同じ色にしよう」という太陽の掴み方。「誰に咲いているのだろう」という花へのはじめての、まっすぐな問いかけ。


「重たい毎日が/欠陥品を制止する」検査の冷たい針が示す「冷たい真実」。その「烙印」に「慣れていくのか」という・・・工場の流れ作業になぞらえた、存在の認識。そのものすごい存在の重さと扱われ方の寒さに、わたしは、ことばのまえで、凍りついた。

「花を美しいと感じる者にだけ/花は美しく咲ける」そのしずかな、真実の吐露。「どうせ来ないと分かっているのに/雨がカッパが明日が来ない」たたみかけられるフレーズに、来ないカッパに・・・わたしは泣いてしまった。

好きな人への「いつまでもずっと/疑問は解かないでいよう」とのみこむやさしさ。「オバケが働く町の脳改良工場」の吐くおそろしげな煤煙。「黒い宇宙の片隅に浮かんでいると/ 地球よ寂しくはないか」と蜃気楼が冷えた紅茶を求める八月五日の砂浜の、うつくしい詩。「隅に置かれて」「イラナイが集まっていく」ごみ箱。

「お金を下ろすと」「ちょっぴり硬い雨粒がかかった」ATMの機械の彼女の肩。「いらっしゃいませ」「ただ踏まれて独り言の挨拶を」くりかえす、店の入り口の野原色のマット。


さて。

「地球の時計を見せてもらえました」と王子はていねいにお別れのご挨拶して「水をちょっと頂いてから帰ります」・・・帰るのです。詩族の王子は。おうじのうまれた、詩の星へ――。

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心に麻酔を

生きる意味を生きる事で
生きている自分


                       ――――片桐丈晴・帯裏の詩より


こころが、あらわれるような、すばらしい詩集でした。







精神障害とは、精神に障害をきたしてしまった人たちのことだろう。その障害のある目線でつづることばが、詩であるなら。詩を日常化したところで生きれば、わたしたち詩書きはみな、精神障害者となる。それを、かろうじて逃れるために、虚構(フィクション)がある。

しかし、詩を生きる、詩人として生きる決意は、この虚構を振り捨てるような、危うさを踏まねばならない場面に、ときに遭遇する。そのとき、正気とはなにか。詩にとって正気とはなにか。いや、そうじゃない、詩にとって「本気とはなにか。」それを、深く考えこんでしまった。

なぜなら、サハラ砂漠を横断するように、店内のわずかな距離をその覚束ない足取りで、一杯のコップの水を運んでくれた彼女は、まさに「本気で生きようとしている人間の姿」以外の何者でもなかったからだ。障害のある、その姿は神々しくすらあった。



☆あさから、いっきに、かきました。てがかじかんで、あしもこごえてしまったので、このままアップします。ご容赦願います。


☆枯葉のなかに、卵の一つだけ残った、鳥の巣を見つけました・・・(写真)

子どもの頃、働く母親の背中に向かって、「わたし、みょうに、ほかのひととちがう」「それが、こわい」・・・と泣きついた日のことなどを思い出したりしました――
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by sechanco | 2011-02-11 13:55 | ミヤオ・リターンズ
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