蝉の声から虫の声にかわって 静かな里の秋がはじまりました。朝夕すずしく。くうきがおいしい。水音を連れて 夏が遠ざかる――
しぶきをあげる人魚姫の
青い蒙古班が忘れられない
舟唄のたよりなさ
舵取りはいないのに
欲望のしぶとさで
いくたび禁制を犯したろう?
すずしのように透けた
憎いからだをだきしめて
さわさわと口づけをする
月の光は雲からも
波からも打ちよせてくる
内なる人は融けていく
一体のままでただよいながら
どくろとなるまで
そのさまでよい
――鮎川信夫『波間の郷愁』
鮎の川のポニョだよ・・・。