父に夏帽をおくった。
父に言葉をおくった。
そして・・・
とんだ
まにあった
「わかる?」ときいた うなづいた
「しんどかったね」というと うなづいた
「みんなしあわせだから」というと うなづいた
「あんしんしてね」というと うなづいた
「はながみえる?」ときくと うなづいた
「そばにいるからね」というと うなづいた
あとは雨音のように 呼吸のおとをきいた
「ごくろうさん」とこころの中で つぶやきながら
ふつかご
みおくった。
103歳・祝天寿全う。パナマ帽子の似合う晴れた夏空へ――。
最後の贈り物となった父の日の――夏帽と言葉は
そんなにわるくないと思った。
わが夏帽 どこまで転げども 故郷 寺山修司